エングラム
最初に聴いた時から色褪せない、痛くて優しい音楽。
彼らのまわりはきらきらしてる。
何度、聴いても。
心に、未来に、記憶に。
透き通って染み込んで。
楽器と体で音を光らせる彼らは──本当に綺麗。
数曲歌ってその日のライブは終わり、先程の聴衆の一部であろう数人に話し掛けられている彼らを遠目に見た。
「……ぅわぁーもぅ」
シイが笑いかけている所を見てると──…嫉妬、だ。
先に帰ってやる。
そう思うってことは、シイと帰ることは当たり前になっていたってことだ。
背を向けて歩きだそうとして、そう気付き足を止めた。
くるりと振り向く。
シイはその人たちと話しつつ──ニイ、と小さく笑ったのを視力が良い私は見逃さなかった。
……うん読まれてるね!
やっぱり素直に待つことにした。
そんな私の所に駆けて来たのは──ユウだった。