エングラム
駆けてきたというより、ゆっくり歩いてきたの方が表現は正しい。
ポケットに手を入れながら、背中にギターケースを背負ったユウ。
金髪が目に眩しい。
「シランさん」
名前を呼ばれて顔を上げたら、まだ明るい夕方を感じた。
「ユウ」
ユウは私の目の前に立って、少し首を動かし女の子たちと話すシイを見やった。
「シイは人気高いんで許してやってください」
思わず、え、と声をあげた。
そりゃあ見てて分かるけど。
だってほら──あの子たちに向ける笑顔は、格好良いもの。
けどケイもユウもかなり魅力的だと思う。
最高のバンド少年のお約束だ、ルックスがハンパなく良い。
「私って不良っぽいですから、少し近寄りにくく感じる人も少なくはないんですよね」
太陽に光る金髪。
鋭い、キツネ目。
それだけの特徴を見ると確かに不良だ。
だがなんか優男っぽい雰囲気も──
「気付いてましたか?」
ユウが金色の髪をかきあげて、隠れていた耳を見せた。