エングラム



「レイラもラブソングだ」

唄を止めてシイは続けた。

「あとChange the World」

「感動に浸ってたのに地味に壊さないでください」

もたれていた顔を上げて、少し苦笑しながらシイを見た。

「つい」

「うわぁ」

ロマンチックは長く続かないらしい。笑えた。







そんな会話を思い出した──自室にてベースを弾きながら。

ふっと顔を上げて壁に掛けてあるカレンダーに目をやる。

「……あ」

来週の学校が終業式。夏休みがくる。
気づかなかった。もう。

夏休みが勝負だって担任に言われた、と思い出す。

まぁ頑張らなきゃ結果は出ないだろう。
勉強は頑張れば結果が出るものだ。

だから──結果は求めてないから。

机の上の文房具や教科書を一瞥して、再びベースの弦に指を走らせた。

言い訳は得意だ。
少し言葉を失ったが、弁舌は良い方だ。


つけたヘッドフォンから低音。
それに心臓を動かされる。



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