エングラム
「あ、意外と良いね」
「数学と英語の2は痛いね」
「そんな慌てるほどじゃないよ」
彼女たちは普通に感想を言って、私に返──さなかった。
「見てこれシランさんのぉっ!」
彼女たちは固まっていた別の女子グループに私の成績表を見せた。
「うわぁあ止めてぇえ!」
必死で奪おうとするが、彼女たちは笑っていたり。
悪意のない、遊戯の笑みだ。
だから私も大きな声で言えた。
成績表の奪い合いだなんて、もう無縁かと思っていたけれど。
特定の友達も居ないし、学校でじゃれたりなんて無いと思っといたけれど。
自分から人と離れていたけれど。
近くを見るのも良いかもしれないと思った。
内申は良いとは言えなかったが、だけどね。
夏の教室の中で、セーラー服の裾がひらりと揺れた。
セミがうるさい。