エングラム



顎に手をあてたシイの言葉が、止まる。

そしてたっぷり間をとってから

「…………忘れた」

そう低い声で呟いた。
そして、ごめんと私に謝った。

「いやいや全然!自分も名前の花言葉知りませんし!」

むしろ、花の名だと──良い名前だと、そう言ってもらえて嬉しいのだ。

シイが、穏やかに笑った。

最初はなんか怒られたけど、すっごい優しい笑みだった。

「シイちょっと照れてるだろお」

イシシと、ケイが笑った。

「な…っ!照れてなんかない!」
シイがケイに言った。

「まぁまぁ」

ユウが笑いながらなだめる。

なんか不思議なバンド三人組だなぁ、と控えめに笑いながら私が思った時

「クラスペディア」

ポトリ。シイが言葉を落とした。



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