エングラム
「クラスペディアで出ようと思ってる」
ケイがはっきりとした口調で告げた。
「……コンテストですか」
ふむ、とユウが呟く。
ケイはチラシを見ながら言う。
「ここ、地元では結構大規模なバンドコンテスト──出てみようよ?」
ケイがアイコンタクトで意思を確認したのは、シイとユウ。
こんな風に集まっても、やっぱり私は。
──…私はクラスペディアじゃないから…。
僅かに目を伏せた私をよそに、はっきりとした口調でケイは続ける。
「これで優勝すればメジャーデビューは確実らしいよ、出る価値あるでしょ」
ユウが、面白そうですね、と参加に賛成するように言った。
「シイはどうですか?」
ユウに尋ねられて、シイは黒い前髪をかきあげて答えた。
「…お前たちってメジャーデビュー目指してるのか?」
オレたち、ではなくお前たち。
「別にそういうわけでもないですよ」
笑っているようにも思えるキツネが答えた。
「ほらぁ、男子高校生のロマン」
全国の男子高校生がそのロマン持ってるわけじゃないですよ、ケイ。
「頼むようおっさん!」
「おっさんじゃねぇ!」
シイが素早く肩を上げた。