エングラム
それを見て笑っていたユウが、そういえばと声をあげた。
「シランさん。前に頼まれていた楽譜編曲してきました」
先週頼んだ、ショパンの英雄ポロネーズだ。
「ほ、本当ですかっ」
思わず聞き直す。
「はい。まぁ編曲と言っても思い付いたようにアレンジしただけです」
ピアノでやる曲を。クラシックを。
バンド用にアレンジできるってすごいと思いつつ、ユウが出してきた楽譜を受け取る。
「ありがとうございます。すごい、ですね…」
「まぁ友人たちに協力してもらいましたからねぇ。──私、高校は音楽科なんです」
「うわぉ」
知らなかった事実に驚きを表す。
ユウはシイとケイにも楽譜を渡すと、メタリックブルーのギターのチューニングを再びして──英雄ポロネーズを弾いてみせた。
聴いたことがある人も多いだろう、きらめく英雄を讃えるメロディーを弾く。
なんでそんなに上手いんでしょうか…。内心唖然。
「うわーショパンだショパン」
「あんまドラム見せ場っぽいのないなー…」
ケイとシイは感想を言うと、楽譜を見ながら音を出す。