エングラム



「んもー、良いじゃんかぁ。じゃあシランちゃん二人で合わせよう」

「ベース二人でかよ!」

シイがシンバルを叩いて突っ込んだ。

「冗談だよぉ。──ユウも笑ってないで、やろ」

「失礼しました」

そう答えたユウの声は震えていた。
まだ笑ってるよこの人、サイケの何が面白かったんだろう。


「ほらほらやろーよぅー死を歌おうよぅー」

「さりげなく不吉なこと言うなケイ!」

シイのツッコミに笑えた。

ケイが尚もボケ続けるのでかなり長いことユウは笑っていた。

やっと始まった音楽は、確かにサイケなカンジだった。
なんか酔いそう、この歌。

ベースを弾きながらそう思った。

この歌が終わると次はザ・バンドだぁ、とケイの趣味が炸裂した。

ついていけない曲も多かったが──心臓に音が流れて生きてると感じられる。


全身の血が音符に変わってしまうんじゃないかと思えたぐらい。



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