エングラム
ライブコンテスト当日──。
「うわぁドキドキする…」
自分が出るわけではないのだが、朝からドキドキしていた。
家族には友達と遊びに行く、と告げて出てきた。
バンドコンテストの会場には彼らと駅前で待ち合わせて向かう。
私はベースを背負い──ケイに持ってきてと言われた──電車に乗っていた。
貰ったクラスペディアオリジナルの曲も、だいたい出来るようになったし。
うん準備万端。
自分も演奏しているつもりで耳で見たい。
「あぁけどーうわぁーねむ…」
曲の練習をしていた、ということもあって昨日は夜更かしをしていた。
そして──DESPERADOの歌詞が後少しというところまで訳せていた。
あと少しだよ、オウ兄。
なんとなく分かってきて、数フレーズでオウ兄が私に伝えたかったことちゃんと知れるから。
英語苦手だけど頑張ったから…褒めてね、オウ兄。
電車がいつもの駅に着く。
私はそこで降り、暑い空気に身を晒す。
駅前まで行くと、そこには既にユウがいた。