エングラム



私は背中にベースを背負っているので、背中が蒸し暑い。

言う通り早い時間とはいえ、夏なのだ。

それなのにユウは相変わらず涼しげだ。

キツネ目は笑っているし、金色の髪もギラギラではなくサラサラと光っている。

この人だけ実は別次元にいるに違いない。

次元の差を感じながらふぅー、と息を吐き周囲に目をやる。
その中に黒いジャケットを着た見慣れた姿を見つけた。


「シイ!」


「おぅ、シラン」

シイはこちらに歩いてくると、私の頭に手を置いた。
ふわりと、甘い花の香り。

「ユウ。おはよう」

「おはようございます、シイ」

ユウはシイに答えて、髪を耳にかけた。

露になる、ピアスでごつごつの耳。
思わず視線をさらわれた。

前に見た以来だ。
伸びた耳たぶ。大きなピアス。
それに幾つかの小さなピアス。

「おっと失礼しました」

目が離せなかった私に気付いて、ユウは再び金色の髪で耳を隠す。

「重そうだな、耳か本当に?」

「耳ですよ。シイにも空けて開けてあげましょうか。……画鋲で」

「いや全力でお断りシマス」



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