エングラム
「そういえば今イーグルスの曲訳してるんですよ」
話題もなかったので適当に振る。
「DESPERADO。翻訳って奥が深いですねー」
「DESPERADOですか。私はイーグルスでしたら、」
ユウが一度区切り、再び告ぐ。
「Hotel・Californiaなんかが好きです」
「あ、名前だけでしたら知ってます」
私が人差し指を立てて答えたら、シイが1フレーズ歌ってみせる。
「ちょっとアメリカの社会を風刺した曲だ」
曲で“僕”が給仕長にワインを頼むシーンでは、1969年以降そんなものはないと言われている。
1969年は革命ってわけじゃないけど──まぁ色々変わって──ワインっていうのはミュージシャンたちのことなんだ。
真のスピリットを持つミュージシャン。
マリファナが蔓延していただとか、色々憶測がある曲。
哀愁漂うメロディーに重なるギターが綺麗だ。
歌詞も深いし、名曲だな。
「追記させていただくと」
シイがいっきに曲の説明をしてから、ユウが言った。
「ヘロイン──麻薬ですね──の過剰摂取で1970年に亡くなったジャニス・ジョプリンの追悼の曲らしいですよ」