エングラム
よくもまあ。
頭の中にそんな情報を入れていられるのだろう。
「ジャニス・ジョプリンて?」
先程その名前を出したユウに尋ねる。
「27歳で亡くなった女性のロックシンガーです」
サラリと答えをいただき、頷く。
「つまりは当時のアメリカを風刺した曲だったと」
シイとユウが頷く。
彼らがよく知っていることが面白くて、色々知りたくて。
色んなロックバンドや曲のことを教えて貰った。
──おかしい。
話も少しくたびれてきて、集合時間から30分以上経っていた。
おかしいと思い始めたのは私だけではない。シイも、ユウもだ。
「さすがに…困りますね」
眉一つ動かさず、ユウは呟いた。
「あぁ。もう来ていても良いはずだ」
眉間にシワを寄せてシイが言った。私も頷く。
「まだ会場行くまでの時間はある。もう少し待とう」
駅のそばにある大きな時計に、私も視線を向ける。
動く秒針に、掻き乱される感情。