エングラム
じりじりと焦がされる、心。
「!」
不意に、シイの手が頭に乗って顔を上げる。
「心配すんな。ニコニコ笑ってすぐ出てくる」
そうですね、と気を持ち直す。
遅刻なんて些細なことだ。
私も学校がある日に寝坊して遅刻したことあるし。
「いやそれ駄目だろ」
「読まないでくださいって。さりげないツッコミやめてください」
シイの脇腹を軽く突く。
「お、やったな」
シイが悪戯っけな笑みを見せる。
ニヤリと歪めた口の端。
「キス攻めして良いか?」
「…ユウ、警察にセクハラ被害訴えてきます」
「シランさん私も着いて行きますよ」
歩き出そうとした私たちの首ねっこが直ぐシイに捕まれる。
「スルーすんな!」
「いやだって…ねぇ?」
言葉を濁し、ユウに視線を送る。
「冗談に聞こえませんよシイ。物陰行ってください」
「え、そこ!?そこ言いますかユウ!?」
物陰を指差しユウに間髪入れずツッコミをした。
「じゃあシラン…行くか」
「逝くんですかそうですか。──って、嫌ですぅうっ!」