エングラム



私の肩を掴んで、シイが言った。

「あ……そうですね…」

思わず息を飲んだ。
シイも少し焦っているのだろう、口調が荒かった。

「やめなさいシイ。シランさんは何も言ってないじゃないですか。…あくまで、」

ユウは私の肩にあったシイの手を払う。
 、、、、、
「思っただけです。気持ちの制御なんて出来ません。心を読んで怒らないでください」

シイは額に手を置いて、ごめん、と息を吐いた。

「いえ、私が悪かったです」

口が滑ったわけではない。
そう私はユウの言うとおり、
、、、、、
思っただけなのだ。

だが心が読めるシイの前では、気持ちも言葉と一緒。

──すべての人を信じる善人にならなきゃ嫌われちゃうのかなぁ…。

あぁ駄目だ。何を考えれば良いの。

「──…シラン…」

シイが私の頬を持ち上げた。
いつの間にか俯いていた。

「…ごめん。読んだオレが悪い。気持ちは言葉じゃないんだ。気持ちを言葉と勝手に受けとった」

至近距離。
シイの眼鏡の奥の目が揺れている。
ゆらゆら、ゆらゆら。



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