エングラム
「分かります」
「普段はこういうことないようにオフにしてるんだけど…ちょっとつい」
いやいや成人男性のちょっとついって。
「成人男性じゃなきゃ良いの?」
「だから読まないでくださいってばあ!!」
「はいはい」
シイが笑うと、手を出しちゃ駄目だよ、とケイが口を尖らせた。
「いやオレ、ロリコンじゃないから」
私は14です。もうロリとかの年齢じゃないですが。
心の中でしたそのツッコミは、さっき言った通りオフにしているのか、多分読まれていない。
ふとシイと目が合う。
何故かすぐ逸らされた。
「…シイさん、あのライブ終わった後はオフじゃなかったんですか」
「オフにしてたんだが、強い感情とかそういうのはなんか伝わるんだ」
その言葉に、私のあれは強い感情ってわけでもなかった気がするなあと思う。
シイさんが言葉を続ける。
「なんて言うか終わった後に、強くはないけど、まるで白い服にカレーが染み付いたような」
「…カレーに例えられるとは」
「ああそこはごめん。あまりにも──…」
シイさんの視線が宙に向く。
「あまりにも、人間の感情にしては冷たかったから」