エングラム
そう言われた私は、特に何も感じず。
「そうでしたか」
困ったように、いつものように、自虐的に、自分を笑う。
「シイさんには見苦しいものを見せましたね」
目を伏せた。
きっと彼は人の心が読めるということで、幾つも嫌なことがあったろう。
私もその、嫌なことのひとつになってしまった。
「シラン」
花の名が。私の名が。
シイの低い声で呟かれた。
「だからシイって呼べって」
その言葉と彼の表情で、
「…はい」
許されたような気がした。
安堵さえ感じたのだから、不思議。