エングラム
ふうと息を吐き、しまっていた楽譜を出した。
それをペラペラと見ながら、CDを再生する。オウ兄がくれたCDだ。
EagleのDESPERADO。
しっとりとしたメロディーが空間に流れ出す。
楽譜の束をめくっていたら、オウ兄からの手紙とDESPERADOの歌詞を訳したものが出てきた。
「あ」
こっちに混ざってたのか。
それにしても、……手紙の存在忘れてた。
薄情だな、自分。
封を開けようとした手を──止めた。
見たい。けど。
もしも拒絶の言葉だったら──私は完璧な味方を失う。
それは再び、持っている楽譜の束の一番後ろに入れた。
──今は、今はまだ。
歌詞の訳もあと一歩のままで、手紙の後ろに差し込む。
「…明日、ケイのお見舞い行こう」
私はその紙の束を、机の中にしまった。
そのままアンプをコンセントに差し、シールドでベースと繋ぐ。
忘れずヘッドフォンをして、ケイが教えてくれたことを思い出しながら弾いた。