エングラム
「あ、お菓子あるんですけど食べますか」
チョコレートがついたスナック菓子だ。
まつたけの山、と書かれたパッケージを開ける時にケイが言った。
「シランちゃん、あーんして?」
鼻血を噴き出しそうになった。
「あ、あーんっ!?」
裏返った私の声に、ケイは首を傾げてきらきらの笑顔を向ける。
「良いじゃん腕使えないんだからーっ」
いや、そうなんですけどと口ごもる。
ケイが、あーん、ともう一度言った。
この可愛さの破壊力に負け、顔を赤く染めながらケイの口元までお菓子を運んだ。
「…もうしません左手で食べてください」
一個自分の口に運んでから、箱ごとケイに渡した。
「はいはい、ありがとうっ」
ケイは左手でパクパクとそれを食べる。
「今度はあーんしてあげよっか?」
「結構です!」
すかさずそう答えると、ケイがくすくす笑った。
「冗談だよお、シイに半殺しにされちゃう」
「いや、ケイの彼女がまず怒るでしょう彼女が…」
私がうなだれながら言うと、ケイは笑い声をあげた。