エングラム



「な、何読んでたんですか?」

話を逸らして、ベッドの上にある栞が挟まれた本を見やる。

「ん、これはねぇ」

ケイは本を手にとり私に見せた。

そこからお互いが読んだ本の話になる。

本当に自慢じゃないが、学校では本を読んでいる時間が多いため読書量は多い方だ。

そんな話をしている内に、眠気が私を襲い始める。

「昨日夜中まで練習してたでしょ?…午前中はゆっくりして午後に来れば良かったのにぃ」

「…すみません、5分だけ」

椅子に座りながら、ケイのベッドに頭を沈めた。

寝顔ヒドいだろうなと底で思いつつケイの声に導かれて眠ってしまった。

──Golden Slumberだ。

シイの声とは違い、少年らしさが残る透き通った声。

「…ケイの歌…好きです…」

ボーカルはあなただけです、と上手く言えたかは分からない。

「うんありがとう…、シランちゃん」

亜麻色がぼやけて、私はたちまち眠ってしまった。



< 287 / 363 >

この作品をシェア

pagetop