エングラム



「なんかすごいね」

隣の席の女の子が、ぽかん、とした顔で言うのだから。
なんだか面白かった。


教師らが慰めながらそのクラスを降ろすと、結果まちの間に出し物。

学校で有志を募り、出ることになった人たちが舞台上で披露するのだ。


ベートーベンの運命を弾く女子生徒。
有名なフレーズに、体が沈む重苦しい低音。

その後に舞台に立ったのは、なぜか英語教諭。マイクを持って歌い出した。

THE BEATLESのRoll Over Beethoven。
タイトルの通り“ベートーベンをぶっ飛ばせ”だ!

私はサビのところで、口元を抑え笑いをこらえた。

「シランさんこれ知ってるの?…先生むっちゃ音痴だけど」

変に声が高い声に、笑いながら隣の席の彼女が言う。

「うん、ビートルズの曲で、ベートーベンをぶっ飛ばせってやつ」

ベートーベンの曲の後にこれはないよね、と歌声を邪魔しない程度に喋る。

「先生何張り合ってんのかねぇ!」

アカペラで歌う先生は、体を揺らしてノリノリだ。

英語教諭だけあって、発音は滑らか。
だが音がなんとも言えない鳴き声だ。



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