エングラム
───オウ兄も私も、タイトルであるDESPERADOを同じ言葉に訳していた。
DESPERADOという単語は、辞書を引くと“無法者”や“ならず者”と出てくる。
だが──…だが。
私とオウ兄は、少し凝らした違う言葉にしていた。
この歌は、不器用で寂しい男の物語。
彼を無法者と呼びのは素っ気ない。愛しさが込み上げるように──…。
“迷子”と訳した。
ちょうど、曲がその迷子に呼び掛けた。
ああ、と私は声を漏らす。
「──…オウ兄…」
この曲は、オウ兄が私にくれたものだと分かった。
私のものには最後の一文が訳されていなかったが、オウ兄のものはしっかり訳されていた。
それは、辞書にあるような固い言葉じゃなくて。
ひどく、優しい、優しい言葉だった。