エングラム



──この時の私は

「泣き顔も見せちゃったし、十分じゃないですか…」

──クラスペディアという

「まだ十分じゃない」

──彼らを束ねるその名の

「お前が気になるんだ、もう怖いとも何も言わせない」

──本当の意味を知らなかった。


何も言うことができない私は、ただこれから何かが変わりそうな予感がした。

「取り敢えず、来週の土曜日の夕方4時から同じ場所でライブやるから来いよ」

なんて強引な。
というかその、やや非常識な気がするのですが。

「オレらの音、気に入ったろう?」

その通りだったから、何も返す言葉がない。

自信満々な、見ていると安心するような笑みだった。



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