エングラム







「……なんかなぁ…」

自分の頭を抑えて私は続ける。

誰に言ってんだって自分。
ごめん独り言。

「あああ」


どうやら私は、落ち着かなくなると更に独り言が出るらしい。

いわゆる“来週の土曜日の夕方4時”の10分前。
私は駅の改札口を抜けたところだ。

行くか行かないか。

せっかく電車に乗ってきたけど──素直に従うのは、ほらあれじゃん悔しい。

どうしようかと頭を抱え込む。

駅の改札口付近で立ち尽くす私は──…あ、今駅員さんと目が合った。


悩んでいたのが嘘のよう。
駅員さんから目を逸らすと慌ててその場から逃げ出した。

うわぁもう良い素直に聴きに行こう──と、足を早く動かしながら思った。



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