エングラム



なんとなくだった音は、駅の出入口に近付くにつれ鮮やかになっていく。

空の下に出た私を迎えたのは、あの声。

“来週の土曜日の夕方4時”の5分前の今既に、曲は始まっていた。

「うわ!」

聴きに行くのを躊躇った事実の片鱗も覗かせず、私は慌てて聴衆に紛れた。

人は多い。

すみません、と言いながら彼らが見える位置まで移動した。


彼ら──クラスペディアという三人を。



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