エングラム



「うん暇だよ」

「お前じゃねぇっ!」

私の代わりとばかりに答えたケイの頭を、すっこーんと、シイが叩いた。

ケイが叩かれたところを両手で抑えながら言った。

「だってシイがイイ大人なのに女子中学生に手ぇ出すから…」

「手なんか出してねぇっ!」

「じゃあイヤラシイ目で見てる」

「見てねぇっ!」

そのやり取りの姿は可愛らしいが、会話が少し生々しい気がして微妙な笑顔になる。

けど──

「羨ましい、なぁ」

ふと漏れてしまった私の声に、シイとケイが口を閉じて私を見た。

その視線は、何故と問い掛けてきているような気がして、慌てて答える。

「あ、いやその…なんかそんなやり取り出来るぐらい仲良いってことが…」

あれ?おかしくないか。

「羨ましくて」

自分が今まで、突き放してきたことなのに。
何都合よく、羨ましいなんて口にしてんの。

「…そうか」

シイが口を開いて、はっとして。
慌てて言葉を取り繕うとする。

「いい」

それを、手で制される。



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