エングラム
「だったらなれば良いだろ」
簡単に、言ってのける。
「オレと一緒にいろ」
やっぱりそれは命令口調。
けどそれに反する、眼鏡の奥の優しい目。
「言っただろ、オレがお前の心を開くって」
だったら、とシイが続けようとしたところで止まった。
…ニヤニヤとケイが笑っていた。
「さぁさぁ続けてよシイ」
「とりあえず黙れ。お前はユウんところ行け」
「はいはぁい。気を利かせてあげようっ」
ケイは私に一度笑顔を向けると、背を向けてユウのところへ行ってしまった。
「…ケイ可愛いですね」
遠くにある亜麻色を見ながら、私は言った。
「…そうか」
一度足元を見て、それから私を見てシイが答えた。
「で、続きどうぞ」
「はっ!?──もう忘れたっ、知らねぇっ」
シイが顔を手で覆った。
えぇ、少し楽しみだったのに。
期待したのに──なんて、日頃感じないものを感じた。
「………だからぁ」
私の表情を見てか否か、顔を覆っていた手をこめかみに移動させ、シイは呟いた。
思わず、じっと見つめる。