エングラム






「…………えろおやじ」

シイと私の繋いだ手を見てケイがぽつりと呟いた。

「えろじゃねぇ、まだ21だ!」

「僕は15だもん」

「それでもオレはおやじじゃねぇ!」

声を鳴らして、シイは私から手をほどいた。

あ、離れた。

なんて思ったときまた、手が繋がれた。

シイと目が合って──口元が緩みそうになり、もう片方の手で隠した。

「くくっ…シイ…」

ユウが腹を抑えて笑った。
金色の頭が小刻みに揺れる。

「ユウ笑うなぁ!」

そう吠えたシイの、無意識か、それ以外か。
繋ぐ手に力が篭った。

思わず彼を見上げて、目が合ったと思えば逸らされた。

顔を手で覆うのは、照れてるときの癖らしい。

そう分かると、可愛いなぁと笑いそうになる。

「ねぇシランちゃん」

顎に手をあてて、ケイが私を呼んだ。

「ベースやらない?」


突然で単純な、言葉だった。


「……はい?」

だけれど上手く飲み込めず、聞き返した。

「僕ら三人でクラスペディアだ。その予備軍としてだけどどう?」



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