エングラム



「今シランちゃんには“断る”と“了承”の選択肢が与えられてる。僕は“断る”を選んだ後キミがどうなるか分かる。“了承”を選んだらどうなるかも分かる」

ケイは真っ直ぐに私を見る。

「未来のひとつが、君がベースを出来れば救われるんだ」

そんな、無いかもしれなくて有るかもしれない可能性を話す。

「唐突だし、遠回りな説明でごめんね」

「お前は一生懸命言葉選んでんじゃないか」

肩を竦めたケイにシイが言った。

「そうですよ」

ユウも一言。

うわぁ…この流れじゃ私も何か言わなきゃな。

「つまりは私にベースをと?」

どんだけかみ砕いたんだ自分。しまったよもう。

「うん」

ケイが頷くてくれたが、心の中で自分を罵倒しはじめた私の手に、ギュッとシイが力を入れた。

思わずシイを見たが、彼と目は合わない。

あぁそうか。
これも優しさだ。



「僕が見てるのはあらゆる可能性」
ハタ
傍から見たら私たちはどう写っているだろうか。

「シランちゃん、やってくれる?」

そんなことは知らない。

「是非。教えてください、ケイ」


私は笑った。



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