エングラム
「悲しいな。お前はオレのこと格好良いとか思ってくんないのか?」
背筋を伸ばして、意地悪な感じたっぷりにシイが言った。
思ってても言えないに決まってますよ!
そのツッコミを心の中でして──。
ニイ、と口の端を上げたシイと目が合った。
…ばっちり伝わっちゃったみたいだ。
本気で穴を掘って埋まろうかと考えた私に、シイが話題を変えて声を掛ける。
「たくさん練習したみたいだな」
言わなくても、伝わったそれが嬉しかった。
「まぁ暇人ですからっ」
「寝る時間削って練習したのは目の下のクマで簡単に分かるぞ」
あっさりそう言われてしまった。
周りにばれない努力って、格好良いと思うのだが。
分かる人には分かるらしい。
それに努力したのに結果が出なかったら、努力したとばれるのは恥ずかしい。
「そんなことないだろ」
私に答えて、シイは私の手首を掴んだ。