エングラム



「…………」

微妙な沈黙が降りる。

せめてここでシイが赤くならなきゃ、冗談だと笑い飛ばせたのに。
ちょっと21歳でしょ大人のオトコでしょ赤くならないでよ。
    ガキ
たかが中学生の気持ちだっていっそ笑い飛ばして…!

「お前の真剣な心笑えるわけないだろっ」

「いやだから読まないでくださぃいっ」

いや嬉しいのだが。
恥ずかしい埋まりたい。

「でお前は──」

真っ赤な顔をしたシイが何か言いかけたとき、


「早いですね、お二方」

「ぅおー先越されたなぁ」


ナイスなタイミングで、ユウとケイの声が割って入ってきた。

足音全然気づかなかった──。

「こいつら足音しないように来やがった…!」

私の隣でシイが舌打ちをした。

ユウの笑顔には、狙って来ましたが何か?と書かれていた。

ごめーんついつい、とケイの笑顔から読めた。

「で?シイはなんて言おうとしたんですか?」

ユウがにっこりと言った。

「聞くな!」

シイが怒鳴って、練習が始まった。



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