エングラム
「一週間ですごいねー」
試しに一通り弾いた私に、ケイがぱちぱちと軽い拍手をくれた。
「い、いえいえまだまだです…」
軽く首をすくませ、私は返事をした。
褒められるのは慣れてない。
「あぁけど、少し音が細いかも。──シイ僕のバックから工具出して」
ケイは顎に手をあてて何かを考える様子を見せると、ベースちょっと貸してと手を出した。
黄色いボディのベースと工具を受け取ると、彼は私に背を向けてカチャカチャと音をたてた。
「シイ手伝って」
「あぁ」
近くに立っていたシイが、しゃがみ作業を手伝う。
一度目が合うと、何か言おうとしたように、シイの唇が開いた。
だがそれがすぐに閉じられ、彼の視線はベースに戻る。
「シランちゃんもっと前面に出ていいよぉー、ポールもそうだから」
背中越しに掛けられたケイの声に、はいっと返事をした。