エングラム
「ありがとうございましたああっ!」
マイクを使わず、ボーカルをしていた亜麻色の髪の少年が頭を下げて言った。
ドラムを叩いていた黒髪の人も立ち上がり頭を下げた。
メタリックブルーのギターを持つ金髪の少年は、頭を下げずにニコリと笑う。
キツネのような、目をしていた。
大きな拍手。
その音を私も降らせた。
頭を下げていた亜麻色の髪の少年が笑顔を向けた。
なんて破壊力。
むちゃくちゃ爽やかな笑顔。
可愛いーっ、など高い声があがって、少し頬を赤らめたところがまた可愛い。
わお、なんて思っている内に集まっていた人々が自分の時間を取り戻して、立ち去っていく。
すごかったね、などの言葉が聴こえて、
「……すごかった」
誰に返すまでもなく私は言った。