エングラム





ケイも赤いベースを出して、一緒に曲を合わせたり。
ユウのギターとも音を絡ませたり。

ドラムセットがないシイは最初スティックだけで練習していたが、しばらくすると何かノートに向かいだした。

何書いてるんだろう、と視線を投げる。

「ん?あぁこれか」

シイがノートから顔を上げた。

今もこの人オン状態なんだ、うわぁ。

「悪かったなオンで。お前がいるとつい面白くてオンのままだ」

「なんですかそれ!」

「ふっ。で、このノートはネタ帳だ」

鼻で笑った後、急に真剣な声になって言った。

ネタ帳って………お笑いなのだろうか。

「違う!オレちゃんと働いてるから」

吉本で?

「いや違うって!」

思考と言葉のやり取り。
ハタ
傍から見ればシイが一人突っ込んでるだけなんだろうなと思ったら笑えた。

「──シイ、痛い人みたいですよ」

心を読めない私にとってはですがね、とユウが付け足して笑った。



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