エングラム
しばらくして練習は終わり。
また駅前でライブを開くので、私も一緒に行った。
「たはぁ、人気者ですねぇ」
彼らの着る黒いジャケットは、派手なわけでもないのに目を引く。
視線を、浴びる。
その視線に少し怯えたら──私を見ずにシイが手を握ってきた。
絶対わざとだこれ罠だ。
ドキドキして怯えるどころじゃなかった。
弾むように歩くケイがにこっと私に笑いかけた。
ユウは私たちを見てクスクスと笑った。
あぁやばいなぁもう。
今まで彼氏なんて居なかったし、手繋いでドキドキして歩くなんて初めてで。
どんな顔して、どんな気持ちで居れば良いんだ。
あぁもうこんな格好悪いのもシイには伝わっちゃうんだろうなと思うと恥ずかしい。うん恥ずかしい。
「それぐらいの方が──…可愛い」
シイがそう言ったが、私には聞こえていなくて風の音としか思えなかった。