エングラム



体に残るのは、唄の余韻。

「綺麗だった…」

彼ら三人のことか、あの音楽のことか。
誰にも拾えないくらい小さな声で呟いた。

さきほど集まっていた場所には、もうパラパラとしか人はいなかった。

歩き出す人の姿を見て、私は本来の目的──行こうとしていた場所──を思い出した。

行かなきゃなと、片付けをする彼らに背を向けた、時。

「──なあっ!」

低い声と共に、パシリと、私の左腕が捕まれた。



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