洒落にならない怖い話
俺はいそいでAに別れを告げ、自転車にまたがった。


帰りは、いくら坂でも10キロの道のりを行けば間に合わないかもしれない。


だから、ヒトナシ坂を通ることにした。


じいちゃんと約束したが、しょうがない。


バケモノもきっと、迷信だろう。


月明かりに照らされた夜道をブレーキなしで駆け下りていった。


この調子なら塾に間に合いそうだ


そう思っていると、昨日の昼間通過したせまいトンネルがぽっかりと口をあけていた。


すこし怖かったが、坂で加速していたし通り過ぎるのは一瞬だろう


いざ入ったトンネルの中は真っ暗


頼りになるのは自転車のライトだけ。


早く出たかったので、一生懸命ペダルをこいだ。


だが、おかしい。


なかなか出られない。


昼間はすぐ出られたのに、今は少なくとも30秒はトンネルの中を走っている。


思えば、今夜は満月で外の道は月光が反射して青白く光っている。


だから、こんなに短いトンネルなら、その青白い道がトンネル内から見えるはずだ。
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