洒落にならない怖い話
その甲斐もあって台風までには母屋の補強は間に合ったのだが、一箇所補強し忘れていたところがあった。
牛舎の補強である。
当時の牛は大事な働き手であり、心細い家計の支えでもあったのでそのままにしておく訳にはいかない。
ところが、牛舎の事まで気が回っていなかったので補強に必要な角材やらが足りない。
おりしも台風が強くなりつつある頃合ではあったが、彼女は意を決して赤ん坊を背負ったまま天神社まで木切れを取りに行く事にした
天神社はその集落から少し外れた林道の奥にある。
彼女は泣く子を背負子に背負ってあやしつつ薄暗い林を抜けていったのだが、道中突然空から大きな声がした。
「おい、お袖さん!」
それは今まで聞いたこともないような大きな声で、言われるまでもなくこの世のモノとは思えなかったのだが、彼女は太い肝の持ち主だったので、怖がるわが子に背負子をかぶせてさらに先を目指したのだった。
「おい、お袖さん!」
天神社の手前まで来ると今までよりもさらに大きな声で自分を呼ぶ声がした。
いよいよ恐ろしくなってきたが、とるものも取り合えず社にある使えそうな木切れをまとめて帰途についた。
牛舎の補強である。
当時の牛は大事な働き手であり、心細い家計の支えでもあったのでそのままにしておく訳にはいかない。
ところが、牛舎の事まで気が回っていなかったので補強に必要な角材やらが足りない。
おりしも台風が強くなりつつある頃合ではあったが、彼女は意を決して赤ん坊を背負ったまま天神社まで木切れを取りに行く事にした
天神社はその集落から少し外れた林道の奥にある。
彼女は泣く子を背負子に背負ってあやしつつ薄暗い林を抜けていったのだが、道中突然空から大きな声がした。
「おい、お袖さん!」
それは今まで聞いたこともないような大きな声で、言われるまでもなくこの世のモノとは思えなかったのだが、彼女は太い肝の持ち主だったので、怖がるわが子に背負子をかぶせてさらに先を目指したのだった。
「おい、お袖さん!」
天神社の手前まで来ると今までよりもさらに大きな声で自分を呼ぶ声がした。
いよいよ恐ろしくなってきたが、とるものも取り合えず社にある使えそうな木切れをまとめて帰途についた。