不思議の国のお伽噺。
sp.3 腐敗した町の姫。
誰もいない町。
いや、本当はいるんだろうけど、誰も出てこない。
寒い風が一筋吹く。
そして、私たちの前に一枚の紙が風と共にやって来た。
チェシャ猫は、それをタイミングよく掴む。
「…切り裂かれる殺人事件、12件目」
チェシャ猫は、静かな声で読み上げた。
「12…人?」
「体、もしくは臓器が一つずつなくなる、被害者はすべて男…。」
…凍てつく町、私は冷えた体を擦った。
「…そこにいらっしゃるのは、アリス、様では?」
「…?」
後ろにいたのは、いかにも執事って感じのおじいさん。
「わたくし、この国の姫の執事をやっております、シェルスと申します。
覚えて、いますかな?」
「…この国の、姫?」
私は、不思議そうにシェルスさんを見つめた。
シェルスさんは、下を向いて、語り始めた。
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