不思議の国のお伽噺。
ガッ
バキッ!
突然聞こえた音に勢いよく顔をあげた。
そこには、頬を押さえて倒れているシェルスさんと、
殴った体制のまま、動かないチェシャ猫がいた。
「…今の言葉、訂正してください、今すぐ。」
私は、チェシャ猫の背中を見つめたまま、動けなかった。
「記憶を取り戻すことは、決して自己満足じゃない。
アリスが記憶を取り戻せば皆が笑うんだ!
皆が笑うまでの、記憶を取り戻す間、有栖はずっと泣いているよ!
それぐらい苦しいことなのにっ…!
自己満足なわけないだろう!」
チェシャ猫が怒ってるところ、初めてみた。
シェルスさんは、立ち上がり、私たちに頭を下げた。
「申し訳ありませんでした。
この腐敗した町を、助けることが出来ず、少し…私が狂ってしまいました」
腐敗した町。
私が、助ける。
姫も共に。
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