不思議の国のお伽噺。
「チェシャ猫、あのねっ」
「うん」
「さっきのチェシャ猫の気持ち嬉しかったよ」
「うん」
「私が、記憶を取り戻すこと、自己満足かもしれないけどっ、」
「アリス、それはちが「でもね、チェシャ猫、」
「記憶取り戻すの怖いけど、苦しいけど、
今まで、やめたいと思ったことないよ
だって私がっ…
私が記憶思い出せば、皆笑ってくれるっ…、
私に、笑ってくれる…っ
その時だけは私っ
ヒトリ ジャ ナ イ」
顔を覆った手が、震えた。
ヒト、リ…
ひとり…
1人?
「アリス、アリスはあの時言ったでしょ?
ハーフグレイに、1人じゃないって。
アリスも同じ。
1人じゃない」
チェシャ猫は、私に強く、訴える。
でも私には、1人と言う単語が強くのし掛かっていた。
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