不思議の国のお伽噺。
小さい私に、母が忙しい父が忙しい、そんなことを言って分かるわけがないだろう。
「アリス、君は皆に愛されている。
こんなに幸せなことを君はまったく自覚していない。」
「自覚…?」
「君は今まで、誰かに強く、本気で攻められたことはあるかい?
君は今まで誰かに、強く拒絶されたことはあるかい?
君は今までに…憎悪を持った言葉をかけられたことはあるかい?
ないだろう?
チェシャ猫も各国の姫も、他の人間も。
君に、笑顔しか向けていないだろう?」
そうだ。
歪んだ姫もチェシャ猫も。
私に、
"ありがとう"とか"大好き"とか。
そうゆう言葉ばかりを私に与えた。
「それを、君は、なんでどうしてと突き放す」
そう。
私は、皆に"ありがとう"
と言われる度に、どうしてと突き放した。
だって言われる意味が分からないもの。
私は、歪ませることしかしていないから。
「誰だって、愛しい者には強く辛くあたれない。
そうでしょう?
愛しい者が、自分の言葉で泣くコトは耐えられない」
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