不思議の国のお伽噺。
「大丈夫?アリス、ごめんね、また、守れなくて……」
また、のところには、強く悲しみの意思を感じとることができた。
チェシャ猫は、私が傷つくといつも自分のせいにして、無力に泣いていた。
いつも、人を傷つけるのは私。
加害者はわたし。
被告人は、「アリス」
「!」
思考の海に溺れていれば、チェシャ猫の声で引き戻される。
「手、痛むだろう?早く、行こう。手当て、してもらおう」
今にも泣きそうな声。痛さに涙目で私がうなずけば、チェシャ猫は私を姫抱きして、走った。
虚ろな目を、チェシャ猫が止まった場に向けた。
〝Tea party!!〟
その看板に懐かしさを覚え、友との出会いに期待を膨らませる。だが、あまりの痛さに、もう意識が遠退きそうだった。
チェシャ猫が一歩踏み出す。
すると、
喉元に剣を。
後頭部に拳銃を。
そんな、冷たいものが、チェシャ猫に突き立てられた。
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