不思議の国のお伽噺。
「お客様?」
「あぁ。」
「そう。自己紹介してよ。」
「……先に、そちらが名乗るべきだ。」
「剣突き立てる僕がディー」
「拳銃構える僕はダム」
「お茶会の門番。」
「歌が大好きな双子だよ♪」
双子は、剣と銃をしまい、チェシャ猫を見る。
本当にそっくりだ。武器がなければ分からない。目も、きれいなオッドアイだ。左は赤、右は青。髪の毛は、ディーが左わけ、ダムが、右わけ。紙の色は、焦げ茶と黒の間である。
「……僕は、チェシャ猫」
双子の、笑みが止まった。
「猫?
じゃあ、その腕の中の…」
「傷だらけの女性は…」
「「アリス、?」」
チェシャ猫は、頷くように、俯いた。
「フハハハハハ!チェシャ猫が、またアリスを傷つけた!」
「ハハハハハ!結局無力な猫なんだ!」
それからも、双子はチェシャ猫を貶めるような発言を続ける。
私は、つい頭にきて、涙ながらに双子を見た。
「チェシャ、猫を…、悪く言わないで…」
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