不思議の国のお伽噺。
「う…ぅ…」
「アリス、平気?
あと、あと少しだから…!
あの、一番大きな扉の部屋が…帽子屋の部屋」
チェシャ猫は相変わらずの微笑みに焦りを交えて私に言う。
私は静かに頷き、目線を扉に移した。
その扉に行くまでの間に、たくさんの扉がある。
そこからはたくさんの笑い声が聞こえた。
ここには多くの未来と、可能性がつまっている。
私は、不意にそう思った。
その間にも、大きな扉にはどんどん近くなっていく。
そして私たちは、
扉を開いた。
「…」
そこには、机に突っ伏している、3人の姿。
大きな耳、大きなシルクハット、そして大きな鼾と小さな耳。
「…あの…っ」
「………」
「………すみません…」
「………なんやねん…もうおやつはないんやって、言うたや…」
一番真ん中の大きな机に突っ伏していたシルクハットは、私を見て固まった。
「………ス」
「?」
「アリス………!」
シルクハットが叫ぶと、左右にあった机に突っ伏してる耳が揺れた。
「アリ、ス?」
「………アリス?」
「…、帽子屋、三月ウサギ、眠り、ネズミ…!」
私が名前を言うと、皆は驚いたように目を開き、そして笑った。
「おかえり…って、腕どないしたん!?
外の薔薇に触ったんか?!
すぐ手当てするからこちらにおいで!」
「おかえりアリス!
大丈夫?!」
「おかえり、なさい
…血…だらけ」
三人は、椅子から立ち上がり、私に近寄る。チェシャ猫は私を椅子に下ろした。
帽子屋たちは腕を見て驚いたのか、救急箱をとってすぐに手当てしてくれた。
「今日は、アリスが帰ってきた記念のお茶会やー♪」
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