不思議の国のお伽噺。
「本当に、本当にすぐ…、帰ってくるの?」
「アリスが望めば、すぐに…」
「チェシャ、猫お…!!」
「アリス…、倒れない程度に…、がんばって」
チェシャ猫は消えて、トランプが闇夜に待っていた。
「…っ、」
まるでチェシャ猫の幻影を探すように、私はトランプを集めていた。このトランプが全部揃えば、彼が戻ってくるって訳じゃないのに。
それが、私に与えられたかの使命のように、己の本能に従い、トランプを集めた。
その間にも、涙は止まることがなかった。
「すぐ、すぐに、帰って来るんだもんね…、私、待ってるよ…っ」
少しだけど、歩きながら君を待ってる。
君はまだ、死んでいないから…。
海の波の音、しょっぱい匂い。
足場の悪い、砂浜。
そして綺麗な満月。
今にもつかめそうで。
もう一度だけ、涙を流した。
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