不思議の国のお伽噺。
「!?」
突然後ろから抱きしめられ、そして目をふさがれる。
「だ、だれ!?」
「ねえ、アリス…、そのペンダント開けてみたくない?」
ペンダント?
ポケットに入れておいたペンダントを、ゴソゴソと探り当て手に乗せる。
「コレのこと?」
「うん」
誰かに、声が似ている。
だけど、思い出せない。
そうすると、彼は私の目から手を離す。
後ろを向いてはいけない。
そう思って、私は前を見ていた。
「開けたくないっていったら嘘になる」
「じゃあ、開けちゃえば?」
耳元で聞こえる悪魔の囁き。
その言葉に、飲まれてはいけない。
そうは思うのに、指は勝手に向かっていく。
だめ、だめ…!!
そう強く念じたとき、手が止まる。
「どうしたの、アリス?」
「だめだよ、だって、チェシャ猫と約束したんだもん。
開けちゃいけないって。
私、今少し辛いけど、ソコまで辛くないから、開けないッ…」
「そう…………つまらないなあ」
それだけ吐き捨てると、後ろのぬくもりは消えた。
振り向けば、誰もいない。
でも、
足元に、白い毛玉が落ちていた、
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