不思議の国のお伽噺。
眠そうに、目をこすりながら。
でも言葉はとても真剣そうだった。
「お…おいしい?」
「そう。
オイシイ…」
訳が分からずに首をかしげると、ネムリネズミは楽しそうに喋りだした。
「アリスの肉はジャムパンより甘くて
アリスの血は帽子屋が入れてくれた紅茶よりも甘いの…
ふふふ。僕たちより下の下層階級にいる動物達は、己の欲望と理性を制御できない。
アリスの横に僕らみたいな人がいないと、
アリスは、食べられちゃうよ?」
両手で、ガオーという真似をする。
その姿がかわいらしくて、私は思わず笑ってしまった。
「クスッ、そう…。
じゃあ、誰か一緒にいてもらわなくちゃね…?」
私は、満月を見つめて思いを馳せる。
早く、早く帰ってきて…。
願うことしかできない無力な自分。
歯がゆくて、また泣きそう。
泣かないように、ポケットの奥にしまったロケット型のネックレスを握り締めた。
ネムリネズミが寝そうになり、それを起こしながら進むことはや三十分。
そこには、大きな和風の御屋敷があった。
「ありがとう、ネムリネズミ…」
「ううん…?
ああ…
またね…あ…りす…」
フラフラしてるけど、大丈夫かな?
私は少しの間背中を見つめていた。
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