不思議の国のお伽噺。
「…っくぁ…!!!」
死んでしまう、かぐやが死んでしまう。
「こ…ろして、かぐや…わた…し…ころ…」
私の腹の上には、さっきかぐやが落とした鎌がある。
それをとって、私を殺せば。
かぐやは助かる。
緩まない手に必死に抵抗し、やっと開いた口から言葉を発すと、かぐやは微笑み私を見つめる。
そして、すぐに真剣な顔になった。
「…アリ…ス…!…じ…ぶんに…
まけるな…っ!!!!!!」
それきり。
かぐやは動かなくなる。
そして私も脱力したように、手が滑り落ちた。
「…かぐや…?
ごめ、なさ…!かぐやあああ…!!!」
人を殺めた。
自分の意思とは違うと言っても、私の手にはかぐやの首の感触とはねた感触が残ってる。
わたしは、手を自分の服で一生懸命こすり立ち上がる。
そして、叫びながらこの館の外へ出た。
私が望んだ未来は、こんなはずではなかった。
私が思い出すせいで歪む姫を救済し
そしてまた思い出し。
それを繰り返し。
チェシャ猫とともに進み。
そして。
全てを思い出したときにある未来に従うつもりだった。
そこにたどり着くまでに、いつも笑顔ばかりがあるとは限らない。
でも、涙はあっても。
私のこの手で。
何かを終わらせることはしてはいけないと思っていた。
…ましてや、人殺しだなんて。
そんなことは…
「あっては、ならない…!!」
私は、何かに怯えるように走り出した。
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