不思議の国のお伽噺。
スタスタと、目の前の彼は進んでいく。
歩く速度が早い。
どこに行くのかも分からない。
不安と疲れで、息が切れてきた。
「チ、チェシャ猫っ!
…早いよ…!!」
止まってくれる気配はない。
私は意を決して肩を掴み、振り向かせた。
「チェシャね…――――――!!?」
違う…この人。
チェシャ猫じゃ…ない。
目を見開き、牙を向きだし、肌を茶色く染めた、恐ろしい…物体…!
「フフフ、喰う…っ!!」
手を伸ばしてきた、物体。
私は必死に後ずさり、方向を変えて走った。
「はぁ…、はぁ…っ!!」
後ろを振り替えれば、ものすごい早さで追いかけてくる、物体。
殺される…、怖い…、怖いよ…!!
「助けてぇっ!!!
チェシャ猫ぉっ!!!!!!」
その時、走っている道の横の茂みから、手が出てきた。
私は、その手に強引に捕まれ、引き込まれた。
.