不思議の国のお伽噺。
「アリスが思い出しているのは、アリスの
容姿
両親
友達
でしょう?
アリスは、
そのときそのときの感情を今理解しているの?」
両親に対する感情も、覚えていないわけな…
…ア、レ?
「わからない?わからないよね?
だってアリスはまだ思い出してないんだもの
アリスは今、第三者から見て分かるアリスを思いだしている
アリス自信の記憶など思い出してはいない
わかるよね?この意味」
そう、そうだ。
ところどころ私自身の記憶を思い出していても、はっきりと記憶することはできてはいない。
うっすらと、自分の中の感情を持っているだけ。
私自身の記憶はない。
ああ、今自覚した。
「ワたしハ、かラっぽ…」
手が震えて、涙が溢れ出す。
「フフフ、今更気付いたの?」
虚無に包まれる体。誰かに支えられていないと、今すぐにも消えてしまう。
「アリス、今君は誰かに頼りたいと思っているでしょう?
僕に頼って良いよ。
僕とおいでよ。
そうすれば。
君は幸せな記憶[サイゴ]を迎えられる」
私を抱きしめる手はどんどんと強くなる。
私はゆっくりと上を向きながら、言葉を紡ぐ
「あなたは、」
真っ白な髪。色の白い肌。朝日は、彼の髪の毛をキラキラと照らしている。
そして、
「ダレ…――――――?」
私を射抜く、赤い瞳。
「フフフ、僕は。」
その狂気の瞳は三日月に歪む。私は、一瞬震えた。
「君の味方の白ウサギ…さ?」
後ろに束ねてある、白ウサギの髪が揺れた。
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